梅ヶ丘を過ぎると路面電車の窓から雨が降り出し、成城学園前で降りると土砂降り。改札を抜けて南口に向かって歩いていると、ふと足を止めた。
8月も終わりに近づき、滝としか言いようのない大雨が降るなんて。休日は残業して、少し早めに退社すると、結果的にこういう美徳になります。
（なんてこったい！）
空を見上げると、建物の間にパズルのような灰色の雲が浮かんでいます。もうすぐ六時です。
宿から徒歩で12～13分ほどかかります。近くには複数のバスが通っていますが、バス停は上り下りができない場所にあり、バスを降りた後も雨の中を歩く必要があります。
タクシーで帰るよりも、スーパーに行ってビニール傘を買った方が安いかもしれません。しかし、大雨（傘をさしていても腰から下はびしょびしょ）で雲の流れが速いので、なかなか決心できませんでした。この突然の大雨は10分か20分で止むと思います。
（ちょっと待って！）
雨宿りに便利な小さな喫茶店も近くにありますが、駅の入り口で立ち止まることにしました。
こんなに自由な時間は久しぶりです。
最初の数分間は、仕事のことしか考えられませんでした。進捗の遅れを補うために休日に残業をしたのですが、思うように進捗が進まず、明日の会議に向けて準備が整っていないのではないかと不安でいっぱいでした。今考えても無駄なことばかり考えていた。
しかし、アスファルトの道路に降り注ぐ大雨を見ていると、思わず別のシーンが現れました。
さびれた寺院に雨が降るシーンでした。周りには誰もおらず、雨と泥と緑の木々の匂いだけが周囲を包み込んでいた。
それは明らかに子供の頃の記憶で、今よりも孤独で行き場のない少年時代、家の近くのお寺の軒下に雨宿りをしていた時の光景でした。柔術の記憶を呼び覚ました夏の雨の息吹。
その記憶を思い出すと、連鎖反応のように、ふと心の奥底に女の子の笑顔が蘇った。小学生の頃、同級生の渡辺薫は自分の名前も書けず、わんぱくな同級生から悪質なイジメを受けていた。どんな子供でも犯す可能性のある間違いは、クラスメートから嘲笑され、侮辱的なニックネームさえ与えられました。
これを聞くと、誰もが彼女を貧しい少女だと思うでしょう！しかし、彼女自身はまったくそのように感じていませんでした。どんなにいじめられても、ミミにはいつも笑顔で、人には優しい。
私を救ってくれたのは彼女でした。10歳の夏に彼女がいなかったら、とっくの昔に道に迷っていたでしょう。はい、教えてくれました。心が野犬のような私に、美しい虹の息吹を見せてくれた。
1
私は、子供の頃のつらい思い出の無益さについて話すのにかなりの経験を積んでいると思います.
若い頃は誰しも損をしたり、言葉では言い表せない経験をしたことがあるはずです。そんな辛い人生を自分だけが生き延びてきたと顔を出すのは非常に恥ずべきことです。おまけに俺みたいな中年男が言うのはもっと醜い。
しかし、恥ずかしながら言うと、私も世の中の多くの人と同じように、幼少期に不幸に見舞われました。少なくとも私にとって家は安全な場所ではなく、まだ 10 歳にもならない頃は、一日中家を出ることを夢見ていました。
少年時代は東京の荒川で過ごしました。
常磐線三河島駅から西へ徒歩10分ほどの小さな商店街で、その周辺にある美容室に併設されたマンションに住んでいます。曳舟で生まれたと言われていますが、家族が増えるにつれ家が手狭になり、三河島に移り住みました。父は上野の大きな靴屋で働いていました。これで通勤がもっと便利になるはず！
昔、引っ越してきたときのアパートの写真を見ました。
見慣れた美容院の茂みの前で、まだ一歳くらいの私を若い父が抱き、母が寄り添い、二人とも笑顔でとても幸せそうな顔をしていた。私も若い頃は二人でニヤニヤして笑っていたのですが、その写真は写真館の店頭でモデルとして起用されるほどで、明るい雰囲気にあふれていました。
父は職場の若い女性に恋をしました。私がちょうど 5 歳のときのことを覚えています。
詳細はもう覚えていません。つまり、父が急に家に来なくなり、母が何度も私の手を引いて父の会社の近くまで行ったことをぼんやりとしか覚えていません。帰り道、上野公園で母がアイスクリームを買ってくれましたが、私は憂鬱な表情で母に何も言えず、伸び縮みする噴水のてっぺんを必死に見つめることしかできませんでした。
捨てられた母親は次第に精神的に不安定になり、私の孤独が始まりました。
もちろん、母は最初から私を見捨てていなかったと信じたいです。一度だけ、家の近くで遊んでいると、突然父が現れ、母に内緒で駅前の喫茶店に連れて行ってチョコレートサンデーを食べさせた。若い女性がそこにいて、小さなモンスターのおもちゃをくれました。家に持ち帰って遊んでいたところ、母が私を見つけて質問したので、父と彼のガールフレンドに会ったことが発覚しました。
母はそれが私の裏切りだと思ったようです。それ以来、彼女は二度と私に過去と同じ笑顔を見せることはありません.いつも眉をひそめて、近寄りがたい表情。
どうしたらあなたのような子供を産むことができたでしょうか。
私がなぜか叱られた時、母はそんな言葉をぼんやりと吐き出した。
母は自分が行き過ぎたことに気づいたに違いありませんが、言葉を変えず、私に謝りませんでした。多分それは彼女が意味したものです。父親が思い通りに愛に向かって走ってきたのに、子供を預けたせいで、自分の愛を追い求められなくなってしまったのかもしれません。
とはいえ、未就学児に大打撃と言うのはお恥ずかしい話ですが、それ以前の私は実は甘えん坊でした。遊びに行くときはいつも父に肩に担がせて、寒い夜は横にいる母のベッドに入り、母の柔らかな足で冷えたつま先を温めます。私の家は裕福ではありませんでしたが、当時はとても幸せでした。
父が家を出たとき、私はすべてを失いました。
父の肩に乗って見た空は、手を伸ばせるほど近くて、でももう果てしなく遠い。母の掛け布団は世界で一番暖かい場所だったが、今では私の掛け布団と数センチの隙間を埋めるのは難しく、いつの間にか丸くなって寝る癖がついてしまった。
そういえば、小学生の頃、父が新品のランドセルを送ってくれたことに気がつきました。顧客の中には革製のバッグを販売している方もおり、その縁で高級品を安く手に入れたそうです。しかし、母はその時すでにランドセルを用意していました。父からもらったものと比べると、明らかに粗悪品で、母は私の前に二つのランドセルを置いて、どちらを学校に持って行きたいか尋ねました。幼いながらも頭脳はすでに身につけていたので、母が用意してくれたものを指さすと、なぜかピタリと叩かれた。仕方なく母の顔を覗き込み、恐怖で父がくれた顔を指さすと、また叩かれて「死なないで」と叱られた。母は、以前の母ではなくなりました。
大人になった今、やっと当時の母の気持ちを思い出せるようになりました。父の裏切りは、母の心のすべてを破壊したに違いない。彼女はプライドが高いので、自分が見捨てられたことに耐えられないはずですし、人生のすべてを一人で背負わなければならないことも、彼女を悩ませ、悩ませているに違いありません。あの時のお母さんは疲れ果てていたに違いない！
そんな母親と一緒に暮らしていると、早い段階で私は不要な荷物のように感じ始めました。
私は母の負担を軽くするどころか、かえって苦痛をもたらし、両親の心の絆を築くことさえできませんでした（なぜ母はそれを考えなかったのか、私も父に見捨てられたのです）。私がこのように愛されないのは当然であり、それを理解するために誰かに教えてもらう必要はありません。この気持ちは言葉では言い表せませんが、心の奥底で感じています。
その後、小学校に入学。
幼稚園も保育園も行ったことがないので、初めて接する集団生活がとても好きです。それまでの遊び相手はせいぜい同じアパートに住んでいた同い年の子くらいだったので、友達が増えて単純に嬉しかったです。
母は近くのプラスチック成形工場で働き始め、私はいわゆるキーチャイルドになりました。でも、当時住んでいたアパートの鍵は安っぽかったので、空き家のドアに侵入した人が本気でやろうと思えば、チェーンの頭ごと外したに違いありませんが、今でも鍵を手に入れたことに少し誇りを感じています。 .言い換えれば、それは私が本当に家族の一員であることの承認でした.
1年生は大きな問題もなく平穏な生活を送っていました。
父譲りのたくましい体つきで、特にスポーツが得意で、走るスピードもクラス屈指。小学生の頃はそのままクラスのリーダーになれるので、家では目立たず、学校では自由気ままに過ごしていました。毎日学校に通えるのがとても楽しく、冬休みや夏休みがとてもつらいとさえ感じています。
小学2年生の秋頃から引きこもり引きこもりを繰り返していました。
あの事件がなければ、学校は私にとって幸せな場所だったのに、それはどんな摂理なのだろうか?でも、あの頃の私がもっと賢かったら、避けられたはずです。
結論から言うと、公園で同じ小学校の1年生に会ったからです。
今はどうかわかりませんが、昔は子どもたちの間に垣根はなく、一度も会ったことがなくても、同じ公園にいれば自然と一緒に遊んでいました。あの子はたまたま荒川区役所の児童公園に出没していた。
彼はやんちゃで面白い子で、私は彼をとても尊敬しています。彼も同じように、私と一緒に公園を走り回って嬉しそうにしていました。夕方ようやく家に帰ると、彼の家が私のアパートのすぐ近くにあることを知り、私たちは喜んでいました.学年は違えど、仲良くなりたいと思っている二人。
入って座りませんか？
彼の家に来ると、彼はしぶしぶ言った。彼はアオウミガメを 2 匹飼っていて、私に見せたいと言いました。母が仕事から帰ってくるまでまだ時間があるので、私は頬杖をついて彼の家にゲストとして行きました。
彼の家は2階建ての大きな家で、1階の最初の部屋は彼と4年生の弟の部屋です。彼が私を家に連れて帰ったとき、居間でテレビを見ている祖母以外には誰もいませんでした。
ついでにチョコあげます。
小さなアオウミガメを水槽から出して遊ぶと、彼は突然言いました。他人の物を持っていくな、と母が平日に命じていたので、本能的に断ったが、母は構わず台所に引きずり込んだ。
私の家にはチョコレートがたくさんあります。
茶棚の引き戸を開けると、中には駄菓子屋にありがちな十数個のチョコレートが入っていた。子供のおやつとして買い戻した一箱に違いない！点心といえば、食べたいときに買うということしか知らないので、彼の家はとても贅沢だと思います。
彼は箱からチョコレートを取り出し、私に手渡した。私は何度も断りましたが（母に隠しておけるかどうか確信が持てませんでした）、彼はそれが私たちの友情の記念品であると言ったので、私はそれを受け入れなければなりませんでした.
この引っ越しが思わぬトラブルを引き起こしたと知った時は、すでに翌日の学校でした。
授業が終わって学校を出る準備ができた後、学年の先生は私に一時的にとどまるように言いました。どうしたものかと密かに思っていた私は、素直に席に座り、みんなが去っていくのを見守った。教室に誰もいなかったとき、先生は私の前の席に座り、昨日誰と遊びに行ったのか尋ねました。もちろん、私は本当のことを言っています。
当時、私の学年担任は重めの眼鏡をかけた中年男性で、七分丈のスーツに梳いた後頭部はかなり痩せていて、クラスでよく冗談を言い、生徒たちにとても人気がありました。 .もちろん、私もあの先生は大好きですので、もし誰かがプライベートで先生の悪口を言ったら、私は彼に警告します。
先生は私のナレーションを聞きながらうなずき、私が公園を出て一年生の家に行ったと聞くと、急に目を真っ黒にした。相手がチョコをくれたと言うと、先生は冷たい口調でこう言い返した。
こんにちは！うそをつくな。そのチョコレートは他人からもらったものではなく、あなたが盗んだものです!
どうしてこうなったのか、本当に理解できない。先生が遊んでいるに違いないとさえ思いました！
子供の母親は、あなたが去った後、家族はチョコレートをなくしたと言いました.
会話が進むにつれ、ようやく、一年生らしきものの母親が、チョコレートを盗んだとして先生を訴えていることが分かった。今訴えました。
しかし、一年生はあなたにそれを渡さなかったと言った。
スピーチの途中で先生の口から出た言葉に、私は唖然としました。
おそらく私が家を出た後、彼の母親が家に帰ってきて、チョコレートがなくなっているのを見つけたのでしょう。当然、一年生に事情を聞いたに違いない。おそらく、彼は厳しい口調で質問を押した。必死になって、彼は断固として知識を否定しました。しかし、彼の母親はまだ彼に積極的に尋ねたので、彼は何もすることがなかったので、彼は私がそれを盗んだと非難しました!
私は間違いなくそれをしませんでした。
当時、私は子供ができることはすべてやっていました。しかし、先生は耳を貸さなかった。その子の母親が保護者会の副会長だったことを後で知りました。
私が盗んだことをここに書いている限り、あなたは二度とそれをすることを敢えてしませんし、家に帰ることができます.
泣き崩れる俺に、先生は紙切れを差し出して言った。今、八歳の子供にそんな自白を書かせたら騒ぎになる。しかし、当時、教師の地位は絶対的なものでした。
私はたくさん泣いて、とにかく書くことになりました。先生が言ったので、母には言えません。あの時、あの紙を先生の前でちぎって、紙くずを空に散らしておけばよかったと今思う。
2
私は家にカメラを持っていなかったので、10代の写真はほとんどありません。
特に小学校時代の写真は少なく、最も古いのは小学3年生の春、所沢のユネスコ記念村への遠足で撮った集合写真です。その時、クラスメートが風車の前で整然と並んで写真を撮っていたのですが、写真にはすでに野良犬のような目がありました。
当時の子供たちは写真を撮るのに慣れておらず、写真の表情はとても真剣で、顔が少し違うだけで、明らかに10歳未満の子供でしたが、カメラをじっと見つめていました。まるで誰かを怖がらせようとしているかのように、母親のように顔をしかめる。
そして、私は最後列の左端に立って、周りの人から物理的な距離を保っていました.私はここで間違った場所に立っていたようです。
この無意味な距離は、当時の私の心の状態をはっきりと表しているようです。その時までに、私は学校に完全に飽きていて、クラスメートの中にいるのは惨めでした.
言うまでもなく、小学二年生の頃の僕の不条理は、僕の心に影を落としています。
誰も信じてくれない、と歪んだ心で考え、相手の一方的な言葉しか聞かない先生にがっかりした。同時に、私は、涙を流し、嫌がりながらも、自分がしなかったことの盗難に対する悔い改めの声明を最終的に書いた自分も嫌いです.
その傷だけなら、時間が解決してくれるかもしれません。当時は仲の良い友達がいて、区役所の公園で走ったり遊んだりしていれば嫌な思い出も多かれ少なかれ忘れることができました。
しかし、何かが私と私の友人の間にギャップを作りました。
その理由は、チョコレート事件がクラスに広まったからだ。1年生の兄は、私のクラスにある男の子を知っていました。人の口は塞がず、口から漏れた情報は瞬く間にクラス全体に広がる。
もちろん、私の無実を信じる友人もいますが、私のことを嫌う人々のグループもいます (子供たちはあらゆる場面で戦うのが好きで、自分の領土を分割して確保することに熱心です。おそらく本能からです)。 ）、彼らは私を嘲笑するために事件を持ち出すだけです.たとえば、鉛筆や消しゴムを机の上に置きっぱなしにして、立ち去ろうとする生徒がいると、生徒たちは私をちらりと見て、「おい、片付けた方がいいぞ！」と叫びます。私たちのクラスに泥棒がいるからです。
最初は何気なく聞いていたのですが、ある時、とうとう我慢できずにやってしまいました。本気で戦うつもりはなかったのですが、教室で1対3の戦いになってしまいました。
今振り返ると、相手の人数が多いことの意義は大きい。
1対1なら気の利くかもしれないけど、相手は3人だし、軽く見れば不利になる。絶望的な気持ちで戦わなければなりませんでした。顔だろうが腹だろうが全力で攻撃する、要するに目の前の人間を殴ったり蹴ったりすることしかできなかった。
結果的に大勝しました。同級生が男教師を呼んで討伐する前に、俺は三人を完全に倒した。彼らは泣いて私の命を懇願し、私はその言葉に酔いしれました。
(結果的にはとてもシンプルでした。)
その時ふと、それが暴力で問題を解決する最も簡単な方法であることが判明し、とてもうれしかったです。
その後、私は以前とはまったく違うように不機嫌になりました。怒りを飲み込むよりも、こぶしで話すほうがいいと気づいたからです。このように、誰も私に逆らおうとはしませんでした。さらに、他人を黙らせるように脅した後、彼らは自分が素晴らしいと感じるようになります。
その後、これ以上言う必要はありません。
以前の仲良しの友達はみんな私から離れ、学校ではとても寂しくなりました。3年生に進級してからまたクラス分けされて、新しいクラスで場違いになりました。クラスの同級生は私を嫌っていましたが、私は真剣に受け止めていませんでした。誰もが私の拳を恐れていると思いました.その時、私は幸せな錯覚に陥り、家で怒りを飲み込むほど、学校でいたずらをしました。
村の記念写真に写っている私は、状況を把握できないただのバカな10代です。大人になった今振り返ると、色々な角度からの恥ずかしい写真です。
でも、私はこの写真が大好きで、子供の頃から大切に保管してきました。四人離れているので、渡辺薫は満面の笑みを浮かべていた。
しかし、眉を広げ、一重まぶた、目を細めた彼女の表情は、笑顔というよりは恥ずかしさのようです。
渡辺薫は私の3年生のクラスにいましたが、彼女がそこにいることは以前から知っていました。彼女は私たちがこの学年で成績の悪いことで知られている人だったので、彼女の評判はありません.
一見普通に見えるが、実は可愛い女の子。背が低く、ぽっちゃり体型でとてもキュートです。
でも小学3年生の時、自分の名前が書けませんでした。トトとカオルの二人は何の関係もないようで、いつもありそうなタイプミスで書かれている。また、二桁の数字の足し算や引き算もダメです。掛け算や割り算に出くわすと、計算自体の意味すらわからなくなります。彼は九九の掛け算を知っていますが、マントラとして暗記する必要があります。
彼女は軽度の知的障害を持っているようです。ただ、知的障害の程度は非常に微妙で、普通学級か特別支援学級（現在は特別支援学級と呼ばれているようです）に行くか、ちょうどその中間です。しかし、当時の同級生は当然そんなことを理解できなかった。
Xunzi は授業の早い段階でいじめられました。その名も冗談で渡辺バカと呼ばれており、彼女に会うとバカ頭に感染してしまうので、誰も彼女に近づきたくないと言っていました。彼女は自分が触ったものにばか菌が感染する可能性があるとさえ言い、誰もが彼女を敬遠した。
彼女が3年生の同じクラスにいたとき、まだ誰もが彼女をいじめていました。彼女を知らなかった同級生までもがいじめの列に加わるだけだった。
私が見る限り、クラスメートは彼女を止めようとしたり、保護しようとしたりしませんでした.口を開いて干渉すると、次の瞬間も同じ扱いを受けるのではないかと恐れているからです。特に男子学生は、渡辺のバカ好きで笑われるよ！任意にペアに合わせます。そういうバカはたまらないけど、小学生ってそういうもの。
そんな扱いを受けながらも、薫はいつも元気いっぱい。
不当な扱いを受けていることに気づかないかのように、いつも笑顔を絶やさず、自然に人に話しかける。近くに座っているクラスメートが筆箱を持ってくるのを忘れた場合、相手がそれを評価せず、彼女を叱っても、彼女は率先して自分の鉛筆を手渡します。彼女はそれに落胆することもありません。彼女の体には怒りや憎しみの回路がまったくないのかもしれない、そんな彼女を見て私は思わずにはいられない。
3
今ではあまり見なくなりましたが、10代の頃は野良犬は当たり前の存在でした。
通常、小さな家が立ち並ぶ路地や商店街の雑然とした場所にうっかり現れ、独自の方法で食料を手に入れ、その日のうちに静かに姿を消します。
野良犬は、人に媚びて生きる犬と、人を避ける犬の2種類に分けられます。
前者は、誰かが彼に小さな顔を向けているのを見る限り、すぐに尻尾を必死に振って地面を転がり、腹を露出させます。これに頼って食べ物をねだり、貪欲に人々に食べさせようと懇願します。街を徘徊する野犬といえば、このタイプが圧倒的に多いと思います。
後者は、あまりにも悲惨な経験をしたことがあるのかもしれませんが、人を見ると逃げるか、逆に吠えます。この種の犬は長生きするはずもなく、なかなか見る機会がありませんが、たまに見かけるととても悲しくなります。ほとんどが首輪をしているので、昔は他人に育てられた犬だったということです。なんらかの理由で飼い主に見捨てられたに違いなく、二度と人間を信用することはありませんでした。
私はどの種類の野生の犬も好きではありません。
彼らがどこかに行ったのかはわかりませんが、彼らが街をさまよっているのを見ると、いつもどこか自分に似ていると感じます。おそらく、この感情は親族への憎しみに似ています。
右！私も行き場のない子供でした。自業自得ではありましたが、一緒に遊ぶ友達もおらず、家にいるだけで惨めな思いをしていたので、街をさまよって時間をつぶすしかありませんでした。放課後、駅前の商店街や区役所の公園などを野良犬のようにウロウロしていました。
しかし、犬が道を歩いて棒に当たるのは避けられないということわざがあるように、私がそうなったのは、あてもなく道を行ったり来たりしていたからです。
小学4年生の夏休みでした。本来は工場に出勤するはずの母親が家にいたので、日曜日だったのだろう。
狭いアパートで母と顔を合わせるのが辛く、朝出かけてしばらくブラブラした後、当時の区役所の裏にあった荒川児童館にやってきた。漫画雑誌を自由に読めるお気に入りの場所であり、暇つぶしの場所がないときの最後の手段でもあります。
たぶん午後3時過ぎ！突然、ゴロゴロと雷が鳴り始めました。窓から見ると空には分厚い暗雲が立ちこめ、大雨が降りそうです。
子供の愚かさには本当に何も言えません、そんな空を見て、早く帰ろうと思いました。このまま児童館にいると、5時の閉館時に大雨になると思います。実際はただの雷雨で、激しくてもすぐに止みました。
私は児童館を出て、家に向かって走りました。しかし、家に帰る途中、大きな雨粒が私の頬を撫でた。周辺はどろどろとじめじめした空気に満ちており、ゲリラリと雨が降りそうな予感がする。
（今、雨から身を隠す場所を見つける方法はありません！）
屋根のある場所を探しています。弾丸を噛んでびしょぬれになったニワトリのように急いで家に帰れば、お母さんはきっと激怒するでしょう。
その後、三河島駅のすぐ近くにある景正寺に駆け込みました。
小さな門をくぐると右側に小さな墓地があり、美しい観音像が向かい合って立っています。さほど大きくないお堂の先が本堂で、軒下で一時雨宿りをする予定です。
急いでそこに着くとすぐに、大雨が降り始めました。目に見えない岩が空から転がり落ちるように雷が鳴り響き、何度も何度も空を横切って点滅しました。
住職にバレないように、しゃがんで体を低くした。雨宿りで叱られるわけではないが、同情されたくない。
時間が経つほど、雨は激しくなりました。風が吹き始め、木々は生き物のようにざわめき、空に閃光があり、視界を過度に露出させるたびに、観音像が目に焼き付けられたように見えました。
観音像は、三河島事故の犠牲者と犠牲者を追悼するために建てられました。
三河島事故とは、昭和37年5月3日に発生した一連の路面電車事故のことで、死者160名、負傷者300名を超える大惨事でした。そのときの遺骨が安置された場所の一つがこの景正寺と言われています。
私が住んでいるアパートはこのサイトの近くにあります。
アパートを出ると目の前に小さな商店街があります。その道を右に数メートル歩くと交差点があり、そこを南向きに立つと目の前に常磐線が走る堤防が見えます。それが悲劇の現場でした。
しかし、私がここに引っ越してきたのは事故から数年後のことですが、毎年5月3日の建国記念日には堤防の高架橋入口に花束がたくさん飾られています。
事故当日、現場は地獄のようだったという。
事故が起きたのは休日の夜で、路面電車で旅行から戻ってきた乗客がたくさんいました。そのため、犠牲者の多くは20代以下の若者だったと言われています。救急車が待ちきれず、地元住民がドアパネルを直接外し、負傷者を病院に運んだという話も有名です。
事故のことを話してくれたのは、商店街の駄菓子屋のおばあさんでした。彼女はよく、景正寺は貧しい死者を崇拝していると言っていたので、景正寺を通り過ぎるときは、慰霊碑に敬意を払うために最善を尽くさなければなりません。ですから、大人になった今でも、そのおばあちゃんの顔は、このお寺の観音像に重なっています。
20分ほど雨宿りをすると、雷が鳴り止み、空が明るくなってきました。しかし、雨はまだ完全には止んでおらず、本堂の軒下にしゃがみこみ、石畳の小道の継ぎ目から小さな泡が出てくるのをぼんやりと見つめていた。
そんな時、思いがけず遠くから聞き慣れた言葉が飛び込んできた。景正寺は私たちの地域では小さな寺院と見なされているため、本堂の近くでも壁の外の車の音や大声で話している人々が聞こえます。
ねえ、渡辺バカ、傘持っててもダメよ！あなたはすでに愚かです。
なんで一日中くすくす笑ってるの、気持ち悪い。
先ほど渡辺バカさんも言ってましたが、それは渡辺薫のあだ名です。寺院の壁の外では、シュンジと彼女を笑った数人の男の子が通りかかったようです。彼女の家は荒川区役所裏のとある小さな食料品店（現在はサンパール荒川というおしゃれな名前に変わっている）にあったと聞いたのを覚えているが、彼女もここに遊びに来るのだろうか？
ちなみに、私が若い頃、雨水には核実験の放射性エネルギーが含まれていると誰もが言っていたので、雨の日傘をささないと、ハゲになるだけでなく、バカになります。
他の人が彼女を笑っているのを聞いたときでさえ、私はそれを感じませんでした.私は彼女に何の同情もありませんし、彼女が嘲笑されることは避けられないとさえ思っています。でも結局、雨の中を駆け出すのが我慢できなくなったので、こんな会話が聞こえてきました。
渡辺バカ、バカすぎてお父さんが家出！
確かにそうではありません。
彼女は前に答えたことがなかった、そして私は彼女の声を聞いた。
父は名古屋に出稼ぎに行った、と母は言った。
もちろんそれはあなたへの嘘だった.あなたのお父さんはあなたの愚かさに耐えられなかったので去ったと私は聞いた.
確かにそうではありません！
この会話を聞いたとき、私はもう耐えられませんでした。雨はまだ強く降っていましたが、濡れずに急いでお寺の外に出ました。
区役所に向かう道を、赤い傘をさした少女と、それに続いて三人の少年が歩いた。少年は全身ずぶぬれで、豪雨も遊びのネタになっているようだった。
私の仮面ライダーのキックを見てください！
そのうちの1人は、彼が話しているうちにますます自己満足になり、突然、Xunziの後ろを蹴りました。荀子は突然立っていられなくなり、傘を持って前にひざまずきました. もう一人の少年はそれを見て大声で叫びました.
你剛才那樣沾到傻子病菌了啦！髒死了。
我默默自他們的後方接近。然後拍拍踹薰子的男生肩膀，算準他回過頭的瞬間，狠狠朝他的顴骨揮拳。
你們幾個，不要太過分了！
我盡可能做出凶狠銳利的眼神，朝他們一個一個瞪去。
我老爸也離家，難道也是因為我太笨嗎？
這幾個男生我見過。都是同一個學年的人，其中一個，以前還跟我同班。
ごめん。
其中一人被我的恫嚇嚇得道歉，剩下的人立刻也跟著乖乖低頭。
跟我道歉有屁用啊，向渡部道歉！
看著全體向薰子道歉後，我才放他們離開。等到暑假結束後，說不定會開始謠傳我是薰子的男朋友，但我不在乎。
ありがとう。
一切結束後，薰子說，向來面帶笑容的她，這次卻難得露出有點氣惱的表情。
我跟你說，你不可以那樣動不動就打人啦！
她那種溫吞的說話，令我很想笑。就因為我出手揍人那些傢伙才會道歉，但薰子似乎沒有意識到這個事實：
妳果然是笨蛋。
被我這麼一說，薰子猛然把臉撇開回答：
我馬上就不是笨蛋了。
なぜ？
我九月就要換學校了，我要去可以讓我聽得懂的學校上課。
我詳細一問，原來她自第二學期起要轉到設有特教班的其他小學了。
距離雖不遠但方向正好相反，所以想必再也沒機會碰面了。看樣子我不會被認定成她的男朋友了。
那很好呀，妳就好好加油吧！
我朝她的肩膀一拍，她咧嘴笑了。
4
之後，父親突然回來了。
好像是因為他和那個女人感情破裂分手了，但好歹已安穩下來的家中，不消說，自然再次掀起風暴。
就算分手了，你以為舊帳就可以一筆勾消嗎？
母親一再重申理所當然的主張，父親倒是不羞不惱，只是替自己找理由解釋。
坦白說，我並不希望父親回來。
正如母親所言，一度拋妻棄子的事實無法抹滅，因此我所受到的傷害也不可能得到補償。只因為無處可去就這麼厚著臉皮搬回來，未免也太丟人了。早知道他會這麼簡單回來，那我看著母親陰沉不定的臉色，戰戰兢兢的那段日子，到底算什麼？
但父母最後還是復合了，對當時年幼的我而言，只能說太不可思議了。那或許就是男女關係的奧妙之處，但父親和母親動不動就搬出都是為了我這句話，令我極為不快。
我開始覺得一切都很可笑父親與母親固然可笑，學校也一樣可笑。世界總是配合別人變來變去，被耍得團團轉的自己也很可笑。電視、電影和書本乃至整個世間，通通都很可笑。
十歲的我，早早便有了那種虛無的目光。做什麼都覺得無趣，彷彿一切都和自己不相干。我很想趕快長大離開家，但有時候，連那個念頭都好像無所謂了。
現在回想起來，如果繼續那樣成長，我想我一定會變成一個心地冷硬如冰的人一個對社會與人性常懷失望，對別人的關懷與善意抱持懷疑的寂寞人。
但是或許是渴望取得某種平衡，在得知那種虛無後不久，我開始做奇妙的夢。
不，夢的本身，其實毫無奇妙之處。
只不過老是夢到素昧平生的陌生人露出殷切的微笑，在看似戶外的場所吃巧克力。就幻想天外無奇不有的夢境世界而言，那反而是過分安靜的風景。
起先夢到的，是五歲左右的女童。她穿著粉紅色洋裝留著妹妹頭，在異樣閃亮的風景中，專心吃著巧克力。無聲無息，我覺得自己彷彿潛入游泳池中，觀看那幅風景。
（剛才那個人，究竟是誰？）
醒來後，我在被窩裡暗自納悶。
女童的臉孔我看得一清二楚，卻壓根沒有印象。既不是認識的人，也不記得在電視上看過。或許只是我自己忘了，其實曾在哪裡見過？
當然，如果光是那樣或許還不值得大驚小怪令我驚訝的是，是那夢境異樣逼真。
比平時做的夢更清晰，簡直就像現實中發生的事。翌晨，甚至就連女童吃的巧克力的氣味，似乎都還留在鼻腔深處。
但是，就算再怎麼奇妙的夢，若只有一次，倒也不算什麼。只不過偶爾做個異樣清晰的夢用這一句話便可解決。問題是，自中元節過後天天如此，又該怎麼解釋整整七天，我每天都做那樣的夢。每次夢中出現的人都不同，但共通點就是他們都在吃巧克力。
有時是高中生年紀的男孩，穿著學生服吃巧克力。他一手插在長褲口袋，拿著整片巧克力啃，吃相看起來很帥氣。有時是看似高雅的中年女人，同樣高雅地掰下一小塊巧克力吃。隔天，是穿西裝的男人，帶著與我差不多年紀的小學男生，把一片巧克力各分一半，開心地吃著。
（這夢境到底是怎麼回事？）
連續七天如此，我不得不納悶。
夢中出現的人，我全都沒見過。彼らは誰なの？為何同樣都在吃巧克力？總不可能是巧克力公司發明了在夢中播放廣告的方法吧！
於是，我決定試試以前在漫畫雜誌上看到的記住夢的方法。不過，其實只是在枕畔備妥便條紙和鉛筆，一醒來便把夢記下，如此而已。坦白說，由於實在太簡單，我甚至半信半疑，但實際一試，竟然意外有效。
我在枕畔備妥小張便條紙與鉛筆，一醒來立刻將夢中看到的風景盡可能地記錄下來。起初，我只能想起笑咪咪吃巧克力的人們，但是或許是記憶力也隨著做筆記增強了，我漸漸在他們的背後看到了細長的影子。
（那個該不會是淨正寺的觀音菩薩吧？）
那抹影子，逐漸越看越清晰，是在暑假即將結束的某天。
那的的確確是淨正寺的觀音菩薩為了紀念三河島事故身亡者而建的觀音像。如此說來，那些陌生人吃巧克力，應該是在淨正寺內。為什麼非得在那種地方吃巧克力不可呢？
發現這點以後，我再也坐不住了。
那天不巧一早就下大雨，等到雨勢減弱到一定程度後，我決定去淨正寺一趟。從位於商店街外圍的公寓走過去，即便是小學生的腳程也只需十分鐘左右。
我出門時正值中午，雨勢已變得很小。我想雨停也只是遲早的問題，但是為求謹慎起見我還是撐傘出門。
淨正寺內，那天一如往常安靜。甚至可以聽見變小的雨滴打在櫻葉和參道石板上的聲音。
（什麼也沒有嘛！）
我邊這麼想，邊在寺內走了十分鐘。墓地裡成排的墓石，以及那塊慰靈碑與觀音像也被雨淋濕，好像比平時更有生氣（這麼說似乎也怪怪的）。
最後，我也膩了在那裡浪費時間，於是準備離開。就在這時，一支紅傘無意間穿過大門走來。
（還以為是誰呢居然是渡部。）
對，是渡部薰子撐著那把熟悉的紅傘。我情急之下躲到排放掃墓用水桶的架子後面，觀望事態的發展。
薰子撐傘走到觀音像前站定，猛然將兩手一拍（不消說，那是錯誤的舉動④）用清楚的聲音說：
請讓XX同學早日收到我的心電感應。
她說的正是我的名字。但是，她所謂的心電感應云云是指什麼，我一頭霧水。
④正確的參拜方式應是一鞠躬，二拍手，默禱之後再一鞠躬。
喂，渡部。
等她抬起頭後，我喊道。薰子轉身看到我，大吃一驚地縮身向後躲。
啊！嚇死我了。不要突然出聲好不好。
就算事先出聲，我想她還是一樣會被嚇到。
不過，太好了。看來菩薩聽到我的心願了。
薰子用如釋重負的口吻嘀咕。
剛才我聽到一點點妳在說什麼心電感應？關我什麼事？
我跟你說。
被我這麼一問，紅傘下的薰子，臉變得更紅了。
其實，我想為上次的事道謝可是，我不知道你住在哪裡，所以我天天來觀音菩薩面前許願。請菩薩讓你再來這裡一次。
薰子邊說邊摸索裙子口袋，取出一片巧克力。那是我忘也忘不了，和以前蒙上不白之冤時的巧克力一模一樣。
上次謝謝你。來，這個給你。
我收下一看，巧克力已經軟趴趴了。雖說下著雨，這時畢竟仍然是八月。
都已經溶化了。
我笑著拆開包裝，撕開銀紙。宛如烤吐司上的奶油，巧克力已經溶化了。我用食指指尖抹起來舔給她看。
好吃嗎？
嗯，不賴。我超愛吃巧克力。
我一邊回答，一邊萌生奇妙的感慨自己居然會在這寺內吃巧克力。
渡部妳剛才說，妳每天都來這觀音菩薩前許願。
我把自己做的奇妙夢境告訴她。
噢，那一定是意外死亡的那些人啦！
薰子理所當然地說。
那場意外發生時，我爸爸說他和附近鄰居同心協力，一起送了很多人去醫院。可是，他說有很多人在半路上就死了，還有很多人抵達醫院後也死了我想，一定是那些人在幫忙。
她的話，令我瞬間感到背上一陣寒意！回想起夢中見到的那些人，我覺得有這種感覺很奇妙。因為他們真的是拿著巧克力吃得津津有味。
說到這裡妳每天都來？
嗯！因為我們馬上就沒機會再見面了。
換言之，我做夢那天，就是她來這裡向觀音菩薩許願的日子嗎？為了我，她竟然天天來
謝謝謝謝妳。
我不覺間心頭一緊。或許不是在第一時間，但她的心願的確傳達到了。
道謝的人明明是我，你好奇怪喔不過，轉學之前能跟你說話真是太好了。
薰子又露出那種困窘的笑容說。
XX同學，上次我也說過，動不動就打人不好喔！會被大家討厭。
這個我也知道。
我只能這麼回答。我實在無法告訴她，那是因為打人讓別人聽自己的命令感覺很爽快。
雖然不太好意思，不過反正要道別了，所以我就直說吧我最喜歡你的笑臉了。
薰子說完，立刻把傘放倒遮住臉。大概是不想讓我看見她害羞的表情，但我很慶幸她這麼做了。
因為聽到這句話的瞬間，我就再也克制不住再也克制不住淚水自眼睛深處溢出。
即便是這樣的我，也有人肯說喜歡我。
即便是心性彆扭又粗暴的我，也有人誇獎我笑起來很好看。
雖然我明明早已主動放棄去努力與人溝通。
謝謝妳渡部。
我拚命拿手背抹去流出的眼淚，一邊說道。她稍微舉起傘，看著我的臉。
咦！奇怪。你怎麼哭了？
那當然是因為太高興了。
我盡可能老實回答。
少騙人了。別忘了，我很笨耶！我是渡部傻子耶！連自己的名字都不會寫被這樣的女生告白，怎麼可能會高興。
不，我很高興非常高興。
真的？
真的。
聽到我這麼回答，薰子目不轉睛地看了我一會。最後她帶著困窘的笑容，也流下美麗的淚水。
我也很高興。
這時，腳下的石板在日光照耀下，不知不覺中拉長了我們的影子，雨停後太陽似乎出來了。我放下傘眼前的天空有一彎大大的彩虹。
渡部，妳看彩虹。
哇，真的耶！
我們各自放下傘，在淨正寺內並肩凝視巨大的彩虹。也許是因為重現的日光太強，彩虹看起來清晰有力。
XX同學，你有沒有聞到橘子的味道？
過了一會，薰子臉朝著彩虹對我說。
被妳這麼一說，的確有一點。
的確如她所言，不知從哪隱約飄來柑橘類的香氣。明顯與被雨淋濕的植物氣味不同，是一種柔柔刺激鼻腔深處的香氣。
會是什麼呢是彩虹的味道嗎？
怎麼可能。
她的話令我笑了，但內心一隅卻倏然在想，或許真的是。世間有時真的會有心電感應，心地善良的死者們，也會為無名少女助上一臂之力。就算彩虹隱約聞得到，又有什麼好奇怪的。
我們把傘扔開，不約而同地牽起手。
5
正如我猜想的，瀑布般的大雨過了二十分鐘左右就變小了。同樣在躲雨的人群之中，已有人早早離開車站大樓。
我瞥向雲層快速流動的天空，思忖自己該怎麼辦。我煩惱了一下，最後做出最好再等一下的結論。
（這才想到，最近都沒看到彩虹。）
我仰望車站前的天空，如此暗想。
意外得到的空白時間不知不覺，我又重回三十年前的少年時代。
每當我回想起那天並肩眺望彩虹的薰子笑容，至今心窩仍會感到一陣暖意。她是第一個讓被眾人疏遠的我，分享到無償之愛的女性。當時，如果沒有與她相識，我八成早已步入歧途了。
從那天起，我努力重新融入學校。
起先當然不順利，但漸漸收到成果，到我畢業時身邊已有很多朋友了。畢業典禮結束後，大家一同拍攝的紀念照中，我和好幾個朋友搭著肩歡笑。
能夠那樣，還是拜薰子所賜吧！若是能與轉到別的學校的她一起畢業，應該會更好。
在這世上，肯定沒有哪隻狗是自願變成野狗的。即便一點點也好，若能被愛若能切實感到自己被某人需要，或許便可重新走上正途。
（差不多該走了吧！）
確定雨滴變得很小後，我也邁步走出。就在同一時間，我看到眼前的馬路上，有一把紅傘正拐彎走來。
紅傘主人一看到我，便立刻微微揮手。另一隻手上，拎了一把紳士用傘。
你回來了。
最後她在我面前站定，伴隨一如往昔的語氣遞上雨傘。
妳幹麼還特地跑來。
偶爾一次有什麼關係。不過，幸好我本來還在擔心如果在我抵達前雨就停了該怎麼辦呢！
我又沒打電話，虧妳算得這麼準，知道我到車站了。
多多少少，就是知道嘛！
薰子說著低垂著眉尾，露出困窘的笑容。